妹への手紙(1)

2025-11-26

妹への手紙(1)

 

左記へ転居した!

一軒家をかりた!

日本東京市外和田堀町和泉二四三!

たところが遠いので

お前のところへ上げるたよりも

何だか他人らしくなりさうだが

そんなことはゆるしてくれるだらうね

新鮮な森の空気と

武蔵野の落葉の匂ひ

青い大根畑の夕月

――一寸こんな風景を連想してくれ

今年のクリスマスには

お前の好きさうな銀の燭台をおくらう!

銀の燭台と私の写真とをね

忘れてた

あの毛糸の股引と

キツスリンのお菓子ありがたう!

今日は一日いお天気だつた

富士山がよく見えて

妹よ!

私の仕事場の窓のい、眺め

私はこの頃夢中になって仕事が出来る

心もたのしい

お前こそ少し遊んでおくれ!

寒くなるので身体を大切にせよ

夕方は早く灯をともすんだぞ

                 たまには母としよに皇宮電影へ行つてもい          【電影】                                 

・                                            映画のこと

ストーブがないので

僕は火鉢をかこんでゐる

お前の方の学校は()()

お前と母の事!

いろ/\考へたり思つたりしてゐる

そして寧馨よ!

お前には見えないがこの美しいおくりものそばに僕はゐる

お前には見えないが

ほらこのカアネエシンとアスパラガス!

この家の近くに中世紀の水門や

プラマンクの風景や

清い小川や珍しいものがいろ/\ある

が少しおちついてから詳しく知らせよう!

十一月二十三日。火曜の晩

天津南開大学 黃 寧馨

お前の兄より。