われらのSouvenirs

2024-11-29

われらのSouvenirs


われらのSouvenirs

青葉につゝまれた五月を迎へた

われらのSouvenirs

動けば動くものがある

口を緘しては一線の平静

オレ、僕、自分、小生

変りはてたオレはオレの声をなつかしがる

久しく人間らしい言葉に接しないオレは

この青葉の風景の中に立ちすくんでをる

口を動かしてもうおいのりの段でもあるまい

一言、二言、それはむづかゆいことだ

人を信じ、信じられることは今後何回とくるか知らないが……

オレは今実際一寸の時間しかない

その中で何を考へたらいゝか?

オレはオレだ

君は君だ

首と首との遙かな距離

淡彩の瑞々しい立体

あれから何年かの月日が流れて行つた

これはこゝでおしまひになるものだと自覚する

オレの出発はこゝから始まる

それならばX光線で見透されたオレのみすぼらしさは?

――いや、いや、歴史は光輝ある名誉

古めかしい匂ひのまゝでいゝ

われらのSouvenirsを

一切のそれを天に昇らせ、大地に埋める

一人が一人、二人が一人

一人が一人

この心安さを季節の夕風がそよ/\吹いてくれる

パツとおちついて色彩の灯がついた!