オレ

2024-11-22

オレ

わるい考へにぶるるとふるへた

泣きたい時もあるにはある

怒りをかみ殺す

そいでオレは鏡を見やうとしない

根つからバカでないものの持つ心理

雪になりさうな夜の理智

一人の一人

夜は陰影のあるおもちや

オレは一九三〇年を迎へたオレ

無表情で、無愛想で

花車な思想者で

涙もろくて、怒りつぽくて

のんでも酔はない酒をたしなんで

一本棒で

静かなお正月で

オレをぐつと抱きしめて

ぐらぐらぐらつと参つてゐる!

この姿を見てオレだと知る人がゐる。

それは誰だか? オレも知らない

だが、ゐる!

そして眼の前に動いてゐる

それは夜中の犬だか

それはさむい空気の中の水仙だか

それはくろい靴だか

魚だか

お正月の夜の静かさに

その中に

だが、ゐる!