あいつの背中へ書いた詩

2024-12-06

あいつの背中へ書いた詩

雨はどしや降りだ

あいつは窓ぎわにもたれて泣いてゐる

遠くでそれを見てる人は知らないふりをして見てゐる

あいつは泣き止んでコンパクトで顔を修理する

あいつの背中はたくましい馬だ

ハタ……タコ……コマ……ハト

アメガフリマスニホンヘアサツテカヘリマス

あいつの背中はこつちへひるがへる

デハ、コレカラマタヲドリマセンカ

(アナタハモノワカリガイゝ)

かゝとの高い靴と衣ずれの音

雨は八月の夜を瑞々しくする

ウオルツの音楽が二人を大広間へ送つてくれる

オワカレノワルツヨ!

あいつもこつちの背中へ字を書いてるらしい

それはこつちに読めない字体で……

二人はバンドの前の噴水やシヤンデリヤに輝く

セナカハクチダ!

ウム、ウム

あいつもこつちも心中ひそかにさびしくなる

くる/\踊りまはれば秋の夜はたのしい!

あいつは顔をうつむいてもたれ気味