くらやみの中の詩

2024-12-13


壁!壁が見える

壁がなつかしい

四つのベツトの中のオレ

昨日のオレ

今日のオレ

明日のオレ

今ここのオレ

雨の音がきこえるか? オレ

オレは全く坊ちやんで、蕾の花!

カアテンの白波に驚いてはいけない

むか/\と悪魔の匂ひがするんだから

もつとにくんでやれ!

可愛い階段の足音に耳をすましてやれ

明日の晴天をいのつてやれ

おのれを殺して時計の音になつてやれ

いざとなつたら隼のやうに飛んでやれ

今は見えないものと見すてゝもいゝ

あの猛獣はやさしいんだから

電燈で長いまつ毛をきら/\させることは無用

雨の中で汽笛

そこでもつと和やかに

オレをオレの服の中に入れ

小さい悪魔を今夜は逃してしまへ!

寒い毛布は軍用品にも似はないこの白色石英

人生が明るすぎるから毛布を深く深く

四つのベツトは今夜も、戦友の疲れた朗らかな夢

オレも、オレも妄想を飛ばしていゝ心にならう

いゝタバコとね、

長い廊下の秋虫の声!

あゝくしやみ一つすると動くものがある!

恐しい私よ! 正しい私よ!