从塘沽到天津

2023-10-26

   

唐沽から天津へ

夕ぐれ發の貨車に乗らなければならない我々

汽船  ふねから降りた我々

潮の匂ひを身につけて

カンテラ一つの貨車の中で體臭を攪拌し乍ら速力と共に夜に入る

火車は一等も二等も今はない

群集は平等だ、汗だらけだ、くらやみだ

水田を走れば水明り

戰後の名残りは各國駐在の兵營のラツパからきいた

群集は身動きの出來ない貨車の中で牛や馬の影を持つ

隅つこで押され通しの若い百姓娘と大きな荷物は人々の眼に入りきれない

一人の軍人は湖南語で「不怕死」を説く

おれは人にまみれて小さい天窓から大陸の夜天を仰ぐ

おれは直隷平野のくらやみの中の聲をきく!

火車は一しきり水を動かし

青葉のトンネルをだんだら模様に描いてつっ走る

停らない驛々のカンテラの灯は眩しい

可愛らしい兵士の持つ銃劒の光りをはつきり見た

雑音雑臭の中から外國がへりの自分達を製へるのは何の力だ!

火車は人の歩行程度に動いてゐる

カーヴをする度に牛や馬のざはめく音聲は痛ましい

汽船から降りたわれわれは潮の匂ひをわすれてはゐない

ほんの少し潮の匂ひがゆれてゐる

かの「不怕死」に力む「黄浦」出らしい士官は我々の匂ひに近よらうとする

我々はまた天津市街の明るい空ばかり案じてる

さつきのんだビールの氣泡は空腹を知らせる合圖になりさうだ

天草女をふりきつて此夜行車に投じた者は一眼見ればすぐ判るんだと、Aは笑ふ

(唐沽から天津へ!)Bの心をおれはのぞく

何時着くかわからない慢車の中の空氣はたつた一個所の出入口から消えなければならない!

おれは今は唯あいつに耳かたむけてゐる

ほらね、きこえるだらう?

おれは直隷平野の暗の中の悲しい聲!

おれはがつしりとこの小さい生存競争に重點をおくが

胸にこみ上げて來る思想を追ふまい!

われわれの歌ふあの唄もこのくらやみの中では見出せないのだから……

火車はぽうと夜の中に流れ

速力を忘れてはおれ自身のさびしい單音  モノトンにききほれてゐる

暗の中の長蛇先頭の氣味惡い火粉は見えないが腹の中の眼に映じた繪だ

我々は水田を渡り青葉のざわめきを分け、石炭の匂ひを散らし

戰後の直隷平野を匍匐する

天津へ近づいて行く!


从塘沽到天津

不得不搭乘夕发货车的我们

从轮船上下来的我们

周身粘满大海的潮腥

在只有一盏马灯的货车厢里搅拌着体臭,与速度一起向夜晚挺进

火车此刻已没有一等和二等之分

所有的人都同样平等,只剩下汗水和暗黑

火车在水田上飞奔,引得光影粼粼

从各国军营的号声中听到了战后的余音

在不能动弹的货车里,与人们为伍的是牛马的身影

百姓姑娘和庞大的行李被挤在墙隅里,密不透风

一个军人用湖南话教训大家不要怕死

我混杂在人群中,从小小的天窗里仰望着大陆的夜空

倾听着华北平原在黑暗中的呐喊声!

火车一时间撼动着河水

慢腾腾地穿行在绿叶掩映的隧道间

没有停靠的车站上,马灯是那么刺眼

那些可爱的士兵们,手上的刀光清晰可见

我们在杂音和杂臭中从外国回来,那控制我们的究竟是何种力量?

火车缓缓行驶,就像人在徒步而行

每当拐弯时,牛和马的喧闹声就越发令人心碎

从轮船上下来的我们并没有忘记海潮的气味

这不,潮水的气味在眼前东摇西晃

那个因不怕死而备受鼓舞的黄埔士官正试图接近我们的气味

我们只顾惦记着天津城内明亮的天际

刚刚喝过的啤酒气泡竟成了预告饥饿的暗语

A笑着说道,一眼就能看出,谁是为了赶上这趟夜行列车而抛下天草女[1]的小子

(从塘沽到天津!)我一直窥伺着B的内心

这不知何时抵达的慢车,只有一个出入口可以排气!

此刻,我只是倾听着那家伙的话语

瞧,能听见吧?

我就是这华北平原黑暗中的悲音!

我只关注着这小小的生存竞争

而无意追踪那涌上心头的思绪!

因为无法在这黑暗中找到我们所吟唱的那首曲子……

火车恍恍惚惚地流淌在夜色中

忘记了速度,只是出神地倾听着自己寂寞的单音  monotone

黑暗中,看不见长蛇阵前头的可怕火粉,但它却是映现在腹中眼睛里的场景

我们穿越了水田,拨开了绿叶的喧嚣,撒播着煤炭的气味

在战后的华北平原上匍匐前进

啊,我们正向天津靠近!


[1] 战争期间流落在九州天草一带为军人从事特殊服务的女人。——译注