幻聴とオレ

2025-03-17

とオレ

 

野州のある高地上の

小さい停車場、小さい森林、小さい部落、鉄道線路。

 

岩山一ぱいのつじと新緑に身を埋めて

オレの見たのはきいたのは

多くの物音の中の鶏のなき声、小学校のざはめきだつた。

 

海抜二百米突たらずの饅頭山の上から

師団参謀の地形判断のまねを一通りすませば

太陽よりもきら/\する水田と

だらだら曲線で遠くへ走る街道の白さが眩しいのだ。

 

鶯が鳴いてるな!

灌木の茂みを行くせらぎを朗らかにきく耳

この時ばかりは夏が来たことをはつきりと感じた

あの騒しい都の花も忘れはてた。

汗の補充のために水筒の水をたいた。

 

、一望千里ずつとひらけた青葉の天地へ見せた胸

先づ高いお山からの小さい人生を眺めるオレ

オレは小供らしい興味からもう地図上の敵を忘却してる

 

オレは今幻聴にとらはれたオレでない筈

だが、何処からか迫るこいつに惹かれてる

利根川を遠く一本そのま右手に見忘れて

しばらくは青葉の大気の中に((たたず))んでゐる。

 

、幻聴とオレ!