校友ストーリー|王佳妮:川外が教えてくれた「型にとらわれない人生への答え方」

2026-04-23

校友ストーリー|王佳妮:
川外が教えてくれた「型にとらわれない人生への答え方」

在学中、学生会会長を務め、一等奨学金を受給し、さらに重慶市優秀学生幹部にも選出されるなど、数々の実績を残した。まさに学内屈指の実力派であった。卒業後は分野の枠にとらわれることなく挑戦を重ね、日本語専攻出身から国有銀行支店長へ、さらに現在は大連海事大学の在職大学院生として学びを深めるとともに、海運企業の幹部としても活躍している。三度にわたる異分野への挑戦を通じて、彼女は「人生に決められた正解はない」という信念を体現してきた人物。それは、本学日本語専攻2006級卒業生の王佳妮さんである。



川外で刻まれた原点

三花通りで輝いた青春の日々

 2006年、高校3年生だった王佳妮さんは、「試してみよう」という思いで全国小語種単独募集試験に挑戦した。すると見事合格を果たし、思いがけず四川外国語大学との縁が始まった。

 「促音一つの長さ、助詞の微妙なニュアンス、そしてイントネーションや発音の細かな違いに至るまで、先生方はいつも丁寧に教えてくださいました」と、大学時代を振り返りながら、王佳妮さんは感謝の思いを語る。「初めて日本語スピーチコンテストに出場する前、どうしても思い通りに発音できない箇所があった。そのとき張穎先生は何度も根気よくの練習に付き合ってくださり、気がつけば教室の窓から差し込む夕日が二人の影を長く伸ばしていました。あのひたむきな指導は、今思い出しても胸が熱くなります」。こうした細部へのこだわりは、一等奨学金の受給という成果につながっただけでなく、優れた表現力とコミュニケーション能力の礎ともなった。2016年には泉州市金融システム主催のスピーチコンテストで優勝を果たしており、その自信に満ちた話しぶりは、大学時代の地道な訓練の積み重ねがあったと言える。また在学中、王佳妮さんは学生会会長を務めた。とりわけ印象深く心に残っているのは、2008年の四川汶川大地震発生後の経験である。学内団委の丁歓教員の指導のもとで、チームメンバーとともに三日三晩準備を重ね、被災地支援のためのチャリティー公演を企画・��������開催した。「皆、目を赤くし、声がかれるまで働き続けても、誰一人として弱音を吐くことはありませんでした。皆が一丸となって何かを成し遂げたあの経験は、今でも自分の心に深く刻まれています。」卒業後も、この経験を通じて培われた運営力やチームワーク、そして強い責任感は、彼女のキャリアを支える大きな基盤となった。2018年と2019年には、福建省金融分野において優秀共青団幹部として、2年連続で表彰されている。







「優秀卒業生」のキャリア転換

故郷への決断――時代を見据えた選択 

2010年の夏、「重慶市優秀学生幹部」という栄養を胸に、王佳妮さんは難関を突破し、中央直属企業に入社した。多くの人が憧れる安定した職を手にしたかに見えた。しかし、入社からわずか3か月後、彼女は迷うなくその職を辞め、故郷へ戻るという決断を下した。そして国有銀行に身を投じ、新たなキャリアへの一歩を踏み出したのである。

 この決断について、王佳妮さんは次のように語る。閩南出身の一人娘として、故郷へ戻るという選択は、どんな大きなキャリアプランよりも重みのあるものだったという。また金融業を選んだ背景には、時代の流れを的確に捉えた判断とともに、自ら進んで学問の枠を越え、実社会へ踏み出したいという強い意思があった。「言語は単なるツールではなく、人と人とを結ぶ架け橋である。確かな語学力に加え、学生会活動で培った対人力があったからこそ、異なる分野に置いても迅速に信頼関係を築くことができた。これこそが、マーケティングの本質だと考えています。」



「異分野出身」の支店長へ

日本語で培った「徹底力」を金融業務の一つひとつに

 当時の中国金融業界は、まさに成長の黄金期にあった。しかし、語学専攻出身の王佳妮さんにとって、それは「これまで磨いてきた武器を一度手放す」ような決断でもあった。四川外国語大学日本語専攻創設50周年の同窓フォーラムで、彼女は当時の心境を次のように振り返っている。「かつて誇りとしていた日本語を、そっと引き出しの奥にしまい込みました。時折、色あせた賞状を手にすると、胸の奥に重たい思いが広がり、息苦しささえ感じたことを覚えています。」

 一方で、「挑戦を恐れず、必ずやり遂げる」気質を持つ閩南出身の彼女は、すぐに気持ちを切り替え、「ゼロからの再出発」に踏み出した。大学時代に日本語を磨き上げたあの徹底した姿勢を、そのまま銀行業務にも生かしたのである。「伝票の記載、契約条項、報告書の数値に至るまで、何度も確認し、繰り返し検証する。正確さと明確さを徹底し、わずかなミスも見逃さない。それが当時の私の基本姿勢でした。」こうした徹底した姿勢とたゆまぬ努力、さらに専門的な金融知識と営業力を武器に、専門外からの出発でありながら着実にキャリアを築いていった。30歳で支店副支店長に就任し、33歳という若さで支店長に抜擢されるなど、着実な成長を遂げていった。



35歳、再びゼロからの挑戦

コンフォートゾーンに安住せず、人生の可能性をさらに広げたい

日本語専攻出身から銀行支店長へ。その歩みは、まさに異分野で成功を収めた好例といえるものだった。しかし彼女は、そこで歩みを止めることはなかった。2022年、35歳となった彼女は、再び大きな決断を下す。長年携わった金融業界を離れ、全く未知の領域である国有海運企業への転身を選んだのである。これは三度にわたるキャリアチェンジの中でも、最も大きな挑戦であった。

「先が見えている道をただ進むだけの人生ではなく、自分自身の可能性を試してみたかったのかもしれません。」と王佳妮さんは静かに語る。「金融の仕事は安定していて安心できる一方で、成長に伴う緊張感や挑戦の実感が、少しずつ薄れていくようにも感じていました。」四川外国語大学で過ごした日々は、人生に決められた正解はないということを、彼女に教えてくれた。

全く未知の領域である海運業界において、彼女は再び「ゼロからの挑戦」を始めた。業界の基礎知識や海事法規を一から学び直すとともに、銀行で培ったマネジメント力や資源調整能力を生かしながら、新たな職場で着実に経験を積み重ねていった。





働く母として大学院進学を実現

人生の可能性に限界はない

王佳妮はこう語る。「異分野への挑戦とは、これまでを否定することでも、すべてをやり直すことでもありません。異なる領域で培った知識や経験を、より高い次元で結びつけ、複雑な世界を読み解くための新たな視点へと昇華させていくことだと思います。」

金融分野におけるリスク管理や資源活用の考え方から、海運業界における船舶管理、船員派遣、さらには国際貿易に至るまで、その専門領域の隔たりは決して小さくない。新たな職務に就いた彼女は、体系的に学び直すことの重要性を、これまで以上に強く実感するようになった。

家族の支えに背中を押され、36歳、二児の母でもある彼女は、仕事と子育てを両立させながら独学で受験勉強に取り組む日々を選んだ。そしてその努力は確かな成果として実を結び、大学院入学試験の第二次試験で首位の成績を収め、大連海事大学社会人大学院への進学を果たしたのである。

彼女は自らの歩みを振り返り、こう語っている。「人生に決まったシナリオはありません。本当の成長とは、学び続けようとする意志と未知の世界に踏み出す勇気、そして複数の役割を担いながらでも努力を積み重ねていく、その強さの中にあるのだと思います。」




AI時代への一つの答え

異分野に挑みながら、「人の温もり」を守り続ける

グローバル化が加速する現代において、国際社会における中国の存在感はますます高まっている。王佳妮さんは、専門性と分野横断的な視野を兼ね備えた複合型人材こそが、これからの時代に求められる存在であると考えている。

「真の専門性とは、知識の境界にとどまることではなく、総合的な素養によって複雑な課題を解決する力にあると思います。未知の分野においても本質を素早く捉え、他者と円滑に意思疎通を図りながら、状況を切り拓いていく。その力こそが重要だと感じています。」語学で培った「緻密さ」、金融の現場で磨いた「堅実さ」、そして海運業で得た「広い視野」。こうした経験を重ねる中で、彼女は多角的かつ国際的な視点から、世界の構造を捉えられるようになっていった。「振り返れば、母校が与えてくれたのは、まさにこうした『応用可能で、未来へとつながる力』だったのだと感じています。」

「技術革新が加速する現代において、機械は定型化された情報を効率よく処理することができます。一方で、人の価値は、そうした枠に収まらない「非定型」の領域にこそ表れるのではないでしょうか。」王佳妮さんは、これこそが外国語大学で学んだ者の強みであると語る。すなわち、多様な文化への深い理解、複雑な状況下での的確な判断力、そして誠実さに基づく信頼と協働の力である。「私たちに求められているのは、ツールを適切に活用しながら、人にしかできない深い理解や心の繫がりを築いていくことだと思います。そして、『人の温もり』と思考の深さを大切にしながら、現実の中で学び続けていくこと。それこそは、どんなアルゴリズムにも代替されることのない中核的な競争力であり、人間固有の価値なのだと思います。」



これまでの歩みを振り返り、王佳妮さんは、家族の支えと母校での学びが現在の自分を形作っていると語る。「家族の支えがあったからこそ、安心して外の世界に挑戦することができました。そして、母校である川外は、世界へと踏み出すための精神的な指針を与えてくれました。」彼女にとって、「川外精神」の価値は、決して一つの枠に留まることなく、「海納百川」という校訓が示すように、多様な文化や価値観を受け入れ、広い世界へと歩み出していく姿勢にある。

「川外の一員であることは、これからも変わることのない私の誇りです。母校がこれからも、言語を『話せる』だけでなく、『言語を通じて価値を創造できる』人材を育てていくと心から願っています。そして、三花路から巣立ったすべての川外生が、どこにいても母校での日々をふと思い出したとき、心の奥には暖かな記憶と前へ進む力がよみがえる。そんな存在であり続けてほしいと願っています。」王佳妮さんは、そう穏やかに語った。