広東外語外貿大学の呉庄教授による「言語知能大講堂」での生成言語学講座

2022-08-31

広東外語外貿大学の呉庄教授による「言語知能大講堂」での生成言語学講座

 

2022617日午前、本学言語知能学院、言語脳科学センターと川外学壇が共催する「言語知能大講堂」の「知能言語名家講壇」は、博文楼401報告ホールで実施された。同講壇で、広東外語外貿大学の呉庄教授は「生成言語学の言語習得とその最新状況」と題する講演を行った。言語知能学院の鄧宇博士による司会のもと、同学院の全教員・大学院生とオンライン参加者、合わせて400人余りが視聴した。

 

講演している教授

 

司会中の鄧宇博士

 

教授はまず、言語習得の理論である生成文法について説明した。生成文法とは、言語力または内言語に関する理論であり、人間には文法にかなう文を生成し、それにかなわない文を排除する仕組みが潜在している。個人の言語力がどこから生まれたのかについては、チョムスキーの「言語生得理論」によると、言語機能の初期状態は遺伝によって決まるものであり、人間独特の属性だという。

チョムスキーの主張した言語理論三段階の十分性を論述する時、呉教授は「顧千帆が趙盼児を引き止めた」を例に挙げ、観察、描写、解釈の十分性を詳しく説明した。それから、呉教授は生成文法の理論的主張を以下のようにまとめた。

1)モジュール論によると、心はモジュール化されたものであり、文法と言語は互いに独立していると考えられる。失語症や特殊言語障害の児童からの大量の実験データはそれを証明している。

2)シンタックス自足論によると、人間の認知システムには自律的なシンタックスのシステムがあり、そのシステムの中の基本的な要素は語義的でもなければ、言説的でもない文法的部分で、これらの要素の組み合わせは、システム外の要因とは関係がなく、「生成文法の意味は組み合わせられるもの」というのは誤解だ、という。

3)生得論によると、子供が先験的言語知識(普遍文法)を持つというのは生物的能力だ、という。

4)連続性学説は、強連続性仮説と弱連続性仮説に分かれている。強連続性仮説は、子供が言語習得の最初の段階ですでに成人の全文法的特徴を持っていたとするのに対し、弱連続性仮説は、構文習得の初期段階では、子供には語彙とシータの範疇こそあれ、機能の範疇はないとする。 

 講義を通して、呉庄教授は多くの児童言語習得の実例と実験データによって、生成言語学の各段階における理論モデルと仮説を体系的に整理した。講演の結びに、より多くの若手研究者がこの分野に身を投じるよう期待も述べた。

 

会場の様子

 

質疑応答の部分では、児童の言語生成の実験設計、生成言語学の変数操作、チョムスキー著『ミニマリスト・プログラム』の本質、言語間における生成文法の応用、生成文法のメリットとデメリット等の質問に対して、呉教授は一つ一つ丁寧に答えた。そして、四川外大では認知脳科学において多くの研究成果を挙げており、生成言語学と認知脳科学を融合させる学際的研究が期待できるとも指摘した。

会場からの質問者

 

その後、鄧宇博士は講演の内容をこのようにコメントした。つまり、生成言語学に対する説明は系統的であること、実験データに基づく理論の論証は十分であること、生成文法と児童の言語発展は融合していること、要するに、視聴者は講演を通じて、生成言語学と児童の言語習得に対する疑問や誤解を解消できた、ということである。

最後に、姜孟教授は講演の内容を、系統的かつ啓発的だと評価したうえ、呉庄教授に今後また「言語知能大演壇」で講演していただくよう期待していると話した。

挨拶する姜孟教授

コメントする鄧宇博士