「景星講壇」第六回の講演を開催

2023-05-17

「景星講壇」第六回の講演を開催

 

 2023329日午後2時から、本学日本語学院「景星講壇」第六回の講演がオンラインで開催された。講師は九州大学人文科学研究院の川平敏文教授で、司会は日本語学院副院長の陳可冉教授である。全国の各大学から70人以上の教員・学生が視聴した。  

 

 

 講演のテーマは「漢詩と俳諧——融合の諸相」である。漢詩文を取り入れた俳諧、漢詩に対抗した仮名詩、明治時代の新体詩という三部構成であった。  

 川平教授は、まず松尾芭蕉の『奥の細道』で李白の「春夜宴桃李園序」が引用されていることを例に、江戸期には漢詩文を日本風に書き直すことが一般的に行われたと指摘した。それから、和漢連句をもって、漢詩と俳諧の融合を説明した。

 その後、川平教授は「雅文化」に属する和歌・連歌と、「俗文化」である俳諧を紹介した上、貞門・談林・蕉風の順に俳諧の歴史を解説した。その中で、俳諧の価値を肯定する貞門は、和歌や連歌は古文の知識や素養が必要であるのに対して、俳諧は簡単・通俗的で誰でも気楽に書けるとして、連歌を超える価値があると主張している。一方、談林は、俳諧は「無心所着」や虚構を重んじるため、滑稽でありつつも、禅的で人をはっとさせるものだという。そして芭蕉の流れを汲む蕉風については、先行研究を踏まえた上、芭蕉の後期作風である「かるみ」の中身は実際漢詩の「洒落」に求めることができると川平教授は論じた。  

 続いて川平教授は、これまでさほど知られていない仮名詩を、その誕生の背景や形式、新体詩への移行の面から紹介した。日本人が漢詩をそのまま読んでも心に響かなかったため、漢詩の中の地名や韻律を、日本人になじみのある形に変えた漢詩和訳――仮名詩ができあがったのだという。要するに、仮名詩とは、漢詩の形式と音韻を模倣し、日本語で作った詩文のことである。  

 最後に川平教授は次のような結論を述べた。つまり、現代詩の源は新体詩にあり、そして新体詩の源流は江戸時代の仮名詩に求めるべきである。現代詩は西洋詩の模倣だという現在の一般的な見方に、古典詩歌からの影響も見落とせない重要な要素の一つではないかとの観点を対置する必要がある。  

 

講演中の川平敏文教授

 

コメントする陳可冉教授

質問する二又淳准教授と学生たち

 

 講演後、陳可冉教授がコメントしてから、川平教授と受講者の間で質疑応答が行われた。質問に対して、川平教授は漢詩と俳諧の関係や俳諧の具体的な意味を詳しく説明した。本学の二又淳准教授は、仮名詩と俳文の関係等について川平教授と突っ込んだ意見交換をした。

 約2時間半にも及ぶ「景星講壇」第六回の講演は充実したものである。学生たちの研究意欲をそそったり、視野を広げさせたりすることができたのではないか。